薬剤師は高給というイメージがある一方、激務でブラックなイメージを持たれることの多い業種です。
それゆえに「薬剤師はやめとけ」なんて言われてしまう事もある職業ですが、薬剤師にももちろん様々なメリットはあり、全ての人に「やめとけ」という意見が当てはまるわけではありません。
この記事では、「薬剤師はやめとけ」と言われる理由を解説するとともに、薬剤師という仕事のメリットとデメリット、向いている人の特徴や将来性など、リアルな実態について元薬剤師の筆者が経験を元に解説します。
是非参考にしてください。
- 平均年収が高い
- 他の医療職に比べて夜勤が少ない
- パート薬剤師でも働きやすい
- 学んだ知識がそのままいかせる
- 仕事に対するプレッシャーが大きい
- 人間関係に苦労しやすい
- 人材不足により激務になりがち
- 拘束時間が長い
- 生涯学習が必要
薬剤師の仕事は、精神的に参ってしまうことも多い職です。
薬剤師とは?簡単に説明
薬剤師とは一言でいうと「薬の専門家」です。薬を使うと人間の体調に影響を与えるため、大学の薬学部、薬科大学を卒業後、薬剤師国家試験に合格し、薬剤師免許が必要な職業です。
薬剤師の仕事先は薬局と病院が大半ですが、製薬メーカーで医薬品の管理・研究職、学校の衛生管理・薬物の乱用防止活動など仕事の幅は多岐に渡ります。
また、資格職であるため安定性が高いイメージがあり、「女子高校生が将来なりたい職業」で上位にランクインしています。
薬剤師はやめとけと言われる理由(デメリット)
資格職であり、安定している薬剤師ですが、「やめとけ」といわれる理由について5つ説明します。
仕事に対するプレッシャーが大きい
薬剤師は薬によって患者さんの病態を左右するため、重い責任をおう仕事です。薬剤師として働く場合、ある程度時間制限がある中での判断を余儀なくされます。
仕事内容が命を扱うプレッシャーとの戦いになるため精神的に辛く感じるので「薬剤師はやめとけ」といわれるひとつの要因です。
また薬局の場合、調剤室はガラス張りで患者さんからもよく見えるため、ある程度みられながら仕事をすることになります。
患者さんからの視線が気になるとプレッシャーに感じます。
人間関係に苦労しやすい
上記でも少し触れましたが、薬局の調剤室をみたことはありますか?ガラス張りで外から見えるようになっています。
狭い空間で数人の薬剤師がプレッシャーと戦いながら働いており、薬の間違いは人命に関わるためミスが許されない環境です。
雰囲気もギスギス、ピリピリしがちになるため、人間関係が悪くなりやすく、狭い室内では人と人との距離も物理的に近くなるので、人間関係に苦労しやすいです。
人材不足により激務になりがち
薬剤師は激務になりがちな職業のひとつです。病院薬剤師では病棟業務の他に委員会を掛け持つなど、一人あたりの仕事が増えていきます。
また調剤薬局では、子育て世代のパート薬剤師がいるほど、ぬけた後の遅い時間帯は少ない人数で仕事をこなさなければならず、激務に感じます。
また、どの職業にも共通ですが採用により人員を補充してもタイミングを見計らったように辞める人が出るため解決されないことも多いです。
拘束時間が長い
特に正社員薬剤師は拘束時間が長くなりがちです。調剤薬局では門前の場合、最後に診察を終えた患者さんが来る場合があるため、閉局時間が過ぎても待たざるを得ません。
また、クリニックの診察時間が午前・午後と別れており、休憩時間が長く、帰りも遅いパターンがあるため拘束時間が長く感じます。
生涯学習が必要
医療は日々進歩しているため、薬剤師免許を使った仕事をする場合、新薬を始めとする勉強が生涯必要です。
また、転職をした際も転職先の病院・調剤薬局で扱う薬(採用薬)を覚えたり、患者に説明できるよう専門用語を使わない説明も必要です。
自己研鑽の学習は時間外に行うことが多く、プライベートを削らないといけないため、薬剤師はやめとけといわれます。
薬剤師の魅力的な部分(メリット)
薬剤師になるメリットはやりがいと給料面の安定性です。
平均年収が高い
令和3年度の厚生労働省の調査によると、職業全体の平均年収のピークは男性55〜59歳で496万円、女性50〜54歳で338万円となっています。
薬剤師の年収は全国平均でありますが、約480万円(賞与なしの場合)となり、高水準です。特に女性の平均年収が上がりにくい傾向にあるため、特に女性にとってメリットは大きいと言えます。
他の医療職に比べて夜勤が少ない
医師や看護師は当直、夜勤がありますが、薬剤師は24時間営業の店舗を除いて夜通し働くのは病院に勤務する薬剤師であることが多いです。
給与水準が医師を除く多職種よりも高めなのに夜勤がないか、少ない職業といえます。
パート薬剤師でも働きやすい
薬剤師の時給パートでは2,000円前後のところが多いです。一般的なパート・アルバイトに比べて時給が2倍近くなることもあります。
フルタイムで働き、週3〜4勤務でも充分な収入が期待できます。
学んだ知識がそのままいかせる
薬剤師は資格をいかした仕事であるため、勉強した知識をいかしやすくやりがいを感じるのがメリットです。
一生懸命勉強し、患者さんに応対して、「ありがとう」と言われると喜びが増します。
薬剤師が向いている人はこんな人
薬剤師が向いている人の特徴を4つ紹介します。
細かい作業が苦にならない人
薬剤師の仕事は細かいところをみる作業が多いです。
- 処方せんとレセコンに入力後印刷された薬袋を見比べる
- 一包化された数種類の薬が間違いなく入っているか確認する
など、例えるなら難易度の高い間違い探しを勤務時間中はずっと行います。よく気がつく性格など、細かいところに気を配れると薬剤師に向いています。
細かい性格はたまにマイナスなイメージですが、薬剤師の場合、細か過ぎるくらいがちょうどよいです。
コミュニケーション能力が高い人
チーム医療においてコミュニケーション能力は必要です。薬剤師は薬を通じて医療に貢献します。
- 患者さんとのコミュニケーション
- 医師・看護師など他職種とのコミュニケーション
- 同僚薬剤師とのコミュニケーション
薬剤師は処方箋や医薬品ありきで仕事が成り立っているため、ひとりでは仕事ができません。コミュニケーションをとるのが得意でなくとも好きな人が薬剤師に向いています。
物事を深く考えられる人
薬剤師は知識を使う仕事で、学校や実習でならった内容をベースに一歩踏み込んで考える場面が多いです。
- (学習した内容:お薬手帳を確認する)自分の薬局から渡していない薬を服用しているのに、お薬手帳に記録がないので、お薬手帳が複数あるかもしれない
- (学習した内容:検査値や服薬状況をチェックする)毎日薬を飲んでいるのに検査結果に反映されていないので、飲み方が間違っているかもしれない
投薬の結果、「なぜそうなったのか?」を疑問に持ち、深く追求できると、患者さんのコンプライアンスが向上したり医師に処方提案できます。常に疑問を持ち続けられ、解決しようと努力できる人が薬剤師に向いてます。
仕事の中断が苦ではない人
薬剤師の仕事では途中で仕事を中断し、対応しなければならないときが多々あります。
- 一包化の監査をしているときに電話が鳴り、応対しなければならない
- 在庫のチェックをしているときに患者さんが来たので応対しなければならない
薬剤師は空いた時間に薬の在庫管理や、後で取りに来る一包化の監査をしていることが多く業務が中断されると仕事が思うようにはかどりません。このような状況が嫌ではない人が薬剤師に向いています。
薬剤師が向いていない人はこんな人
薬剤師が向いていない人の特徴を4つ紹介します。
大ざっぱな人
1つ1つの業務が患者さんの命にかかわるため、「だいたいでいいか」と大ざっぱな性格だと薬剤師に不向きです。
- 同じ薬剤名でも*OD錠か普通錠かを見落とす
- 入るはずの薬袋・ビニール袋にきれいに入れられない
上記はほんの一例ですが、薬剤師は細かい仕事の連続です。大ざっぱな自分と仕事内容のギャップが大きいほど薬剤師には向いていません。
※OD錠:口の中で速やかに溶けて服用できる錠剤
接客業務が苦手な人
ドラッグストアや*OTCを扱う薬局では接客業務もあります。処方箋がない分、患者さんからより丁寧にヒアリングをしてOTCや健康食品の相談にのる必要があります。
コミュニケーション能力が必要なのは薬剤師に限ったことではありませんが、専門用語は極力使わないなど患者さんに寄り添った接客スキルが求められるため、接客が苦手だと一部の薬剤師資格を使った職業は向きません。
※OTC:薬局・薬店・ドラッグストアなどで処方せん無しに購入できる医薬品
協調性がない人
協調性がない人も薬剤師には向いていません。薬剤師がふだん仕事をする調剤室は薬品棚が天井近くまであり狭く感じます。
調剤室では一般的に薬剤師1人に対して机やイスの用意はありません。このため個人のスペースの確保が難しくなり、状況によっては譲り合って使用しなければならず、お互いの協調性が重要になります。
また、患者さんからも治療に協力してもらう必要があるため、病気や生活に対する考え方を尊重して治療を進める必要があります。治療を円滑に進めるためにも協調性は大切です。
勉強するのが嫌いな人
医療は日々進歩しているため、薬剤師として働きながらも勉強をする人でないと向いていません。
薬学生として勉強し、国家試験に合格したところで学習をやめてしまうと最新情報から取り残されてしまいます。
最新情報が治療に直結するため治療や薬の話についていけず、仕事をする上で困るのは自分自身です。
勉強嫌いの人は薬剤師に向いていません。
薬剤師になるには?
薬剤師になるには、高等学校を卒業後大学の薬学部に進学するか、薬科大学に進学する2通りの方法があります。
薬剤師免許が取得できるのは6年生過程のみですので注意が必要です。
大学に6年間通うとなると学費の問題がでてきます。国公立と私立では学費に差が出ますのでよく調べてから進路を決めるとよいです。
薬剤師の大半が働くのは病院や薬局です。一昔前までは医師の指示通りに薬を渡せばよかったのですが、2015年以降、対物業務から対人業務へとシフトするようになりました。
参考:患者のための薬局ビジョン
仕事上コミュニケーション能力が求められますので対人業務に抵抗がないかなど資格を使わない部分についても自己分析するとより安心です。
なお、専門学校や資格取得講座では免許をとることはできません。
薬剤師の将来性
薬剤師に向上心や最新技術との共存が考えられれば薬剤師に将来性があります。
薬の取り揃えを非薬剤師、薬の知識の補助をAIが行ったとしても薬局・病院ユーザーの大半は高齢者であるため対人業務は完全になくならないと考えられています。
時代の流れについていけない薬剤師や機械や非薬剤師ができる仕事にやりがいを感じている薬剤師が淘汰されるようになります。
また、薬局において都市部と地方、資金力、規模によっても一概にはいえないため、現状維持が続くとも予想されています。
薬剤師の将来性は知るだけ損はないといえます。
薬剤師の年収
賃金構造基本統計調査によるデータを元に算出すると、薬剤師の平均年収は約480万円(賞与を除く)です。職業全体の男性の平均年収のピークである496万円なみの給料がもらえるといえます。
管理職や認定薬剤師の資格があるとさらに給料アップが見込まれます。
製薬メーカーMRでは年収1,000万を超えることがありますが難易度が高く、薬剤師では一握りの人しかなれません。
薬剤師でキャリアアップをしたい方へ
薬剤師のキャリアアップは主に2つです。
管理職になる
調剤薬局では薬局長、病院では薬剤部長など、現場で働く薬剤師を管理する立場になるキャリアアップがあります。
全国展開する規模の大きい職場だと、複数の店舗を統括するマネージャー職、人事担当などへのキャリアアップも可能です。
管理職のポストがあいていない場合、転職を考えること視野に入れます。
認定薬剤師になる
感染症や漢方・生薬など専門性を高めた薬剤師は高度医療を支える上で今後重宝されていきます。
薬剤師の年収は初任給から平均より高めですが年数を重ねても上がりにくいのが現状です。認定薬剤師になると給料が上乗せされたり、転職で有利になります。
薬剤師はもともと勉強が好きである方が多く、認定薬剤師を目指すこともひとつの道といえます。
薬剤師をやめたい方へ
薬剤師はルーティンワークが多く、人によっては退屈と感じます。
辞めたい理由を考える
辞めたい理由が「ルーティンワークが退屈」だと転職しても同じ理由で転職したくなります。
薬剤師は資格の仕事であり業務上大まかな流れは変わらないことが多く、人の命や法律に関わるため仕事の自由度は低いと考えられます。
一般的に生活するためには収入が必要ですので生活のためと割り切り、余暇や家族との時間を充実させると良いでしょう。
人間関係が悪化してやめたいと感じるときは上司や信頼できる人に相談して、解決するようにします。
解決できず転職する場合、薬剤師は人材不足であり、辞めにくい職場も多いので退職代行サービスを利用することもできます。
辞めた後を考える
明日、職場を退職したとして何を仕事にするのか考えます。
- 薬剤師の資格を使わない仕事にする
- 薬剤師の資格を使った仕事にする
薬剤師の資格を使わない仕事とは、英語やプログラミングなどを学んで全く別の職業につくことを指します。
薬剤師の仕事は時給換算では2000円前後と高めに設定されているため、生半可な気持ちでは最初の収入のギャップに驚き挫折する可能性が高いです。
そこで安定志向が高い方は薬剤師の資格を使った転職をする方が無難といえます。
転職は可能だが、理由が大切
薬剤師は求人が多く、勤続年数が少なくても転職できるのが現状です。しかし採用する側からすると採用を見送られる可能性もあります。
- 志望理由が曖昧
- 転職の回数があまりにも多い
どちらも「採用してもすぐに辞めてしまうのでは」と思われることが原因です。逆に転職の理由が採用する側を納得させるものでしたら転職を成功させやすいため、転職サイトに登録し、担当者に話してみることがおすすめです。
人手不足等で精神的に辞めにくい場合は退職代行サービスも検討してみましょう。
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まとめ
薬剤師は資格を使う仕事であるため、ある程度安定した給料が見込まれる人気の仕事です。しかし狭い調剤室では人間関係が悪化しやすく転職を考える人も多いです。
仕事内容も患者さんに渡す薬に間違いがないかを探すなど細かい注意が必要な仕事も多く、職場の雰囲気がピリピリしやすいのも現実です。
まずは自分が薬剤師に向いている性格なのか、キャリアアップで解決できることなのかを考え、それでも難しいようなら退職代行や転職サイトを利用して担当者に相談してみましょう。
一人で悩むよりも職場と離れた第三者に話を聞いてもらうと自分の気持ちにうまく向き合うことができます。
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